開催が1週間後に迫った全仏オープン2023、今年も見どころが盛りだくさんです。テニスのデータに詳しいDan Westonが、男子シングルスのトーナメントを解説しながら、Pinnacleのマーケットで価値を見出すヒントをご紹介します。
グランドスラム第2戦、4大大会の中でも最も勝つのが難しいといわれる全仏オープンがまもなく始まります。球足が遅いクレーコートでは通常、ハードコートやグラスコートに比べてポイント、セット、試合にかかる平均時間が長くなります。
「赤土の王」と呼ばれ、過去に前代未聞の強さで全仏オープンを制覇してきたラファエル・ナダルにとっては、クレーコートは何の障壁にもなりませんでした。しかし、今週初めにナダルの欠場が決まったことで、大会に向けて興味深い動きがありました。
全仏オープン2023男子シングルスの予想:本命選手
ナダル欠場のニュースが流れた後、Pinnacleで本命に挙がったのは*2.240のカルロス・アルカラスで、アウトライトマーケットではノバク・ジョコビッチが*2.750 と僅差につけています。*8.880のホルガー・ルーネは、本記事執筆時点でこの2人の他に1桁のオッズがついた唯一の選手となっています。今週初めのローマで、予選を勝ち上がってきたファービアーン・マロジャーンに衝撃的な敗北を喫し、今シーズン一の衝撃が走ったという事実がなければ、アルカラスのオッズはさらに低くなっていたでしょう。
ローマでの大会以前のアルカラスは無敗で、マイアミ以降に出場したクレーコートでの試合は、セット単位での勝敗が24-2という記録を残しています。この戦績は、過去2か月のアルカラスがクレーでどれだけ素晴らしいプレーを見せてきたかを示すものです。スペイン出身のマロジャーンに負けたのは、その日たまたま調子が悪かったという以上の何かがあるとは思えませんし、もちろん彼の支持者もそうであることを願っているはずです。オッズが妥当な低さであることからも、マーケットがアルカラスを本命と考える理由がうかがえます。
これは、少なくとも一部は、ノバク・ジョコビッチの肘の問題によるものです。どの試合でも手堅い優勝候補として名前が挙がる選手であるにもかかわらず、肘に問題を抱えるジョコビッチは今シーズン、クレーでの戦績が振るいません。今年、クレーコートでのセット単位の勝敗は12‐8と、対戦相手を圧倒してきたこれまでのレベルと比べて、ジョコビッチらしさがほとんど出せていません。イワン・ガホフ、ルカ・ヴァン・アッシュ、トマス・エチェベリーらとの対戦でタイブレイクを落としている最近のジョコビッチを見ると、彼がいかに精彩を欠いているかがわかります。
全仏オープン男子シングルスの優勝候補
イタリア国際の結果が、全仏オープンのマーケットに大きな影響を与える可能性があります。ローマでの大会で優勝した選手の調子によって、マーケットで選手が「振るいにかけられる」ような気がします。ダニール・メドヴェージェフは日曜日の決勝でホルガー・ルーネを下し、来週の大会の優勝候補にも食い込んできています。
メドヴェージェフは、全仏オープンの手堅い選択肢といえるでしょう。
興味深いことに、先日のローマでの準決勝では、試合前の本命としてチチパスがメドヴェージェフをわずかに上回りました。しかし、全仏オープンのマーケットでは、チチパスははるかに低い評価となっている点がどうも解せません。球足の遅いクレーコートに適応したプレイができるようになってきたメドヴェージェフと、チチパスの月並みなリターンデータを見る限り、現在のマーケットプライスでは、メドヴェージェフが全仏オープンの手堅い選択肢と言えるでしょう。
また、ルーネにも十分に可能性がありそうですし、ヤニック・シナーにもバリューがあるかもしれません。イタリア人のシナーは先月、病気のため試合への出場を控えたことで、全仏オープン前にしっかりと休養をとっているはずです。そしてデータ的にも、ジョコビッチとアルカラスを除く誰よりも優れています。リターンを得意とする点も全仏オープンでは有利となり、 *14.840で大いにチャンスがあると言えます。
これまで見てきた選手の他に、分析上全仏オープンを勝ち進む候補がいるかどうかを判断するのは非常に難しくなります。今年のアレクサンダー・ズベレフのレベルは上位20~25位の選手を上回るものである一方、アンドレイ・ルブレフはグランドスラムの準々決勝で0-7と、1セットも取れていません。プロテニス大会の中でも体力面が大きな課題となる全仏オープンで、これは重大な危険信号です。
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